Students’ Motivation as a Function of Language Learning: the Teaching of Arabic in Israel.
in Dorneyi 2001b
先ほどのMcGroartyに引用されていた論文。自らの意思に反して強制的に学習せざるを得ないL2学習において、motivationはどの様な作用を受けているのかを研究している。特に、政治的に対立している集団の言語を学習するとき、言語学習が、L2集団の文化理解や、L2集団とコミュニケーションしようとするmotivationにどんな影響を与えるか、をみた。
IsraeliでArabicを学ぶというcontextは非常に特殊。長きにわたるアラブ諸国における対立のせいで、イスラエルヘブライ語話者のアラブ語学習に対するはmotivationは低い。が、「言語習得が対立国家のコミュニケーションをうながし、平和への架け橋になるだろう」という国策から、イスラエルでは積極的にアラブ語が教えられている(7-9年生は必修)。ここで、生徒の動機づけが低い×アラブ語が重要視されている というconflictがおこっている。
著者らによる1999の研究によると、アラブ語(パレスチナ方言)を学習している小学生は、アラブ語を学習していない生徒に比べ、アラブ語とアラブ文化に関して、よりpositive attitude & higher motivation to study Arabicを示していることがわかった。これを受けて、本研究では更に高学年(12歳中学生)ではどうなのかを検証する。
調査の対象となったのは、テルアビブ都市部の中学生(12歳)1690人。被験者は①自発的アラブ語学習群285人、②強制的アラブ語学習群847人、③自発的アラブ語未学習群(自分で他言語を選んだ)382人、④強制的アラブ語未学習群(学校側から他言語を学ぶように指示された)172人。これらそれぞれの群で、更に半分が小学校でアラブ語(Spoken)を学んだ経験があった。
調査は、pre-test/treatment/post-testデザインで、treatmentの前後に質問紙調査が行われた。質問紙調査は、アラブ語の自己評価・アラブ語を学ぶ動機・アラブ語クラスへの満足度の評価、の3つを聞くものだった。
結果。まずは、質問紙で聞いた動機を因子分析にかけ、①〜④群に関し、因子ごとに強さを見てみた。全ての因子でもっとも強力な影響を与えたのは「過去にアラブ語を勉強した経験の有無」で、経験有り郡の方が強い動機付けを示した。アラブ語学習が自発的な強制的かは、それほど強い影響力はなかった(有意差なし)。結論としては、生徒のmotivationに影響を与えるのは、それを自発的/強制的に学ぶか、ではなく、それを学んだ経験があるかないか、といえる。
次に、どのmotivational factorsのどの変数が、将来アラブ語を学ぶという生徒の動機づけにつながるか、を調べた。従属変数はdesire to study Arabic in the future、13のmotivational factors。重回帰分析の結果、全てのmotivational factorsは将来アラブ語を学ぶ動機を有意に影響していたが、特に影響力が強かったのが、cultural motivation, instrumental motivation, currently studying Arabic or not, parental motivationなど。小学校でspoken Arabicを学んだかどうかは、有意には影響していなかった。
Discussionとしては、まずは本研究では、学校でL2を学ぶことがL2文化を学ぼうとするmotivationにもつながる、と言えることがわかった。アラブ語を学んでいる郡の方が、未学習郡よりも将来のアラブ語学習に対しても強い動機づけを示した。学習が意思的なものだったのか任意だったのかは、重要ではなく、学習したかしないかが重要だった。
ではなぜ、このような好ましい結果が生まれたのか。認知心理学のforced-complianceの研究によると、自分の本来のスタンスと対立する行動を強いられると、人は自分のスタンスを変えるのだという。つまり、「勉強したくない教科を勉強しなくてはいけない」という状況を変えるために、生徒は自分の行動と合致するようにmotivation(cognition)を変える、という。アラブ語を学習してる学習者は、「学習しているんだから重要なものに違いない」「やるからには楽しく勉強しなくちゃ!」などと考え方を変える。また、学習していない学習者は「学習していないのは重要じゃないから」と学習していない自分を正当化するような考え方をする。ほんまいかなぁ…と思ったけれど…。今、アラブ諸国の内に平和に向けて前進しようという流れがあることも関係しているのではないかと著者はほのめかしている。
更に、統計的な数字などはでていないけれど、future Arabic studyを予測する要因として、「アラブ語の授業に対する満足度」が挙げられていた。ただ言語を教えればいいのではなく、そのクオリティーが問われている、という(P309)。だから先生達はがんばりなさいよー!みたいなことは書かれていたけど、具体的な話が全くなく、ここをもう少し膨らませて欲しかった!と残念。