Intrinsic, Extrinsic, and Integrative Orientations of French Canadian Learners of English.
Canadian Modern Language Review 57,3.

本論文の目的は、①フランス系カナダ人の英語学習者の内/外発的動機付けを再検証 ②内/外発的動機付けと統合的オリエンテーションの関係を探る の二つ。Deciの自己決定理論によると……「自分が自律しているという感覚を学習者が持つことは大事である。なぜなら、この感覚が学習者の内発的動機付けを支え、それが学習活動を続ける力の源になるからである」。著者らは、この考えを言語学習に応用することを試み、フランス語とスペイン語を学ぶ英語母語話者の学習者においてもこのモデルが当てはまることを検証した。本論文では、これを今度はフランス系カナダ人の英語学習者において検証しようというもの。それから、現在のところ、内/外発的動機付けと、統合的/道具的オリエンテーションの関係にも合意が見られていないので、それらの関係も見てみる。
 調査は英語の英・仏バイリンガル大学の夏期イマージョンプログラムに参加したフランス語を母語とするカナダ人学生59人に対する質問紙調査。調べたのは、①3タイプの外発的動機付け(external regulation= 褒美・罰により誘発される行動, interjected regulation = externalよりはinternalizedされた理由で行動を起こす, identified regulation=個人がその活動が行う価値があるとみなすので、行動をする )、内発的動機付け、無動機付け、②自律の認識、③L2の自己評価、④動機の強さ、⑤今後の英語学習への意欲。
まずは、①のオリエンテーションのバラエティーを分散分析で調べ、事後検定(テューキーの方法)を行った。結果、identified regulation, external regulation, integrative orientationがequally strongly endorsedであり、他のオリエンテーションはこれら3つよりも有意に低かった。これら3つの次に来るのがintrinsic motivation→interjected regulation→amotivationの順、差はそれぞれ有意。次に、それらのオリエンテーションと、その「前提」antecedentsとしてあると仮定できるもの(perceived autonomy②/perceived competence③)と、その「結果」consequenceとして生まれるだろうと仮定できるもの(Motivational intensity④/persistence in English study⑤/成績)の、相関関係を調べた。antecedentsの方は、動機付けのオリエンテーションがより内発的なもの(integrative orientation, intrinsic motivation, identified regulation)はperceived autonomy/competenceとの相関が高かった。integrative orientation が最も高く.44。consequenceの方も、同じように、より内発的な動機付けが、motivational intensity, persistence in English study, Final gradeとの相関がより高かった。ちなみに、integrative orientationはFinal gradeと高い相関(.43)があった。
内/外発的動機付けと統合的オリエンテーションの関係については、重回帰分析を行った。独立変数=intrinsic motivation, identified regulation, introjected regulation, external regulation, amotivation、従属変数=integrative orientation。結果、有意にintegrative orientationを予測するのはintrinsic orientation(重決定係数=.49)だけだった。また、integrative orientationとの相関が有意にあったのは高い順から、intrinsic motivation(.70), identified regulation(.42)だった。
これらの結果から言えることは、まず①フランス語母語話者のカナダ人は、興味や他者理解、個人が価値を見出している目標達成のため、就職や賞賛のために英語を勉強している傾向が強いこと(これは、フランス語を勉強する英語母語話者のカナダ人にも同じことが言えることがわかっている)。②自己決定理論によって仮定された、「前提−動機付けのオリエンテーション−結果」の関係は、おおむね第二言語習得の分野にもあてはまる。つまり前提として、自律やcompetenceがあると、動機付けはどちらかというと内発的(楽しいから/価値があるから勉強する)で、その結果、学習にかける努力や成果が大きい。内発的動機づけと統合的動機付けの相関は高く、前者は後者を予測するものであった。つまり、楽しいから、勉強したいから、英語を勉強する人々は、英語コミュニティーの人々と触れあいたい、という欲求を持っている。
感想:こういう動機付けのorientationの分類や、その関係を検証することにはあまり興味はないので、いつもこの手の論文はさーっと流し読みしていた。そのせいか「全然わからん」と思うことが多かったけど、今回こうやってまとめながら読んでみると、よくわかった。こういう読み方も、いいもんだなぁ。自分のテーマにはあんまり関係ないけど、動機付けへの見識を深めるという意味では有意義な読み物だった。