Williams & Burden, 2001

Making Sense of Success and Failure: the Role of the Individual in Motivation Theory.
in Dornyei 2001b

かつて「successful language learnerを構成する構成要素は何か」と、言語学習の成功に寄与する要因を一つ一つ分析し、それを羅列することがはやった時期があった。しかし、そのようなことをしても、所詮それは要素の羅列にすぎず、実際はそれらの要因が複雑に作用しあってsuccessful learnerになるわけであって、その要素を一つ一つ真似したからといって、それが言語学習の上達に即座に結びつくわけではない。
その後は、個人が「どのように考えているか、どのように(言語学習やタスクなどを)捉えているか」という、個人の「考え方」が言語学習の成功にも深く関わっている、と考えられるようになり、知能指数や成績をself-perceptionと結びつける動きがでてきた(認知心理学の分野で)。言語学習の動機付けを考えたときにも、identityとagencyの要素を忘れてはいけない。と、いうわけで、attribution theory.
attribution theoryとは、成功(失敗)を何(=自分、自分以外)のせいにするか、によってその後の行動が変わってくる、という理論。文化によってもこれは違うらしい(Fry and Gosh 1980の実験:西洋の学生は、成功は自分のおかげ、と見るが、東洋の学生では成功を自分以外の要因のおかげ、と見る傾向にある。一方で、東洋人の学生は失敗を外的な要因ではなく、自分の努力不足と捕らえる。ああ、謙虚なアジア人)。また、生徒が感じている成功の要因と、教師が感じているその生徒の成功の要因にも差があることもあり、この辺をもっとよく理解するのが、生徒の発達過程を理解する上でも重要だと著者は述べる。そこで、本論文では、生徒が自分の成功・失敗の要因として挙げているものを、教師のそれと比べてみる。
29人(全員10年以上教えた経験あり)のEFL教師にopen-endedな質問紙調査(When my student do/don’t do well in English the main reasons are;に5つ続ける)、25人の生徒を質問紙調査(こちらはsemi structureなopen-ended Q.)と面接調査。
結果は、教師は生徒の成功要因として1位teaching material(23=frequency)、2位teaching method(21)、3位student motivation(12)を挙げており、生徒本人の努力より、教授法やテキストといった教師らの努力に帰していてego-protective behaviorsを示していた(のがstrikingだった、と著者は言っている)。一方、生徒の方はどうだったかというと、教師の結果とは全く異なっていた。1位practice(20) 2位supprt from family and teachers(11) 3位exposure to the language(7) positive attitude(7)となっていて、teaching materialは言及されず、teaching methodはわずか3というfrequencyだった。まとめると、教師と生徒の間で、生徒の成功要因が何かに関しては乖離があり、生徒はinternal、教師はexternalなものに成功の要因を帰している。
では失敗の要因に関してはどうか。教師の結果は、1位inadequate teaching material(21) 2位insufficient knowledge of the basic English (14) 3位students’ personality(12)。2,3位に生徒の要因が入っているあたり、Weiner1992の言うように「生徒の良いパフォーマンスはgood teachingのおかげで、lack of improvementは生徒マター」と教師が考えていることがわかる。一方、生徒は失敗の要因は1位inadequate teaching methods(8) 2位lack of support from family and teachers (8) 3位 poor comprehension(7)とみており、生徒はexternalでコントロールできないものに失敗要因をみている。教師の結果とはやや異なっていた。
まとめると、成功・失敗の要因に関しては生徒と教師の間にズレがあり、特に教師は「できるのは教師のおかげ、できないのは教師以外のせい」とego-protectiveであった。implicationとしては、教師は生徒の考え方などをもうちょっとよく理解するべき。それが生徒の動機付けを理解することにもつながるし。
  私としては、教師が生徒の成功要因としてmotivationをあげ(第3位)、失敗要因としてlack of motivation(第8位)を挙げていることに注目したい。少なくとも、教師はachievementにmotivationが寄与していると思っているのだ。Williams & Burdenの本、Psychology for Language Teachersを読みたい。よく引用されている本なのだけど、図書館に無い。買おうか買うまいか、悩んでいる…。図書館に入らないかなぁ。リクエストしてみたんだけど。