Research in Second Language Learning Motivation: Psychometric and Research Design Considerations.
in Dornyei 2001b.
 
既存のSLAにおけるモチベーション研究を概観し、その「精度」を高めるために、psychometric and research design considerationを提案する。特に、causalityを明らかにするためにGardner2000が提唱する4つの方法について具体的に述べる。

①Measures with good psychometric properties. motivationという概念をきちんと確立させるために、それを測定できる形で定義し、きちんと測定すべき。測定手段は内的信頼性・実用性があり、test-retestできるものであるべき。まずは信頼性に関してだが、信頼性がないと妥当性も無くなるので、高い信頼性係数を確保するのは大前提。信頼性を表す指標としては、内的一貫性を表すクロンバッファαが使われるが、これが0.8以上であることが望まれる。αの値をあげるためにとられる一つの方法としては、①「似たような質問」を用意する(あまりにも問題が似すぎているとredundantになってしまうので、extraの要素を付け加えることも忘れずに!)②質問数を多くする(しかし、前提条件として、全ての質問は同一の構成概念を測るものとする)。なぜ問題数を多くするとαがあがるかというと、アイテム一つ一つがunderlying dimensionに新しい情報を与え、それらが統合されると、個々の情報のpeculiaritiesがaveraged outされるから。ただ、問題数を増やすと回答に時間がかかるので、研究者は、「自分が最も測りたいものは何か」「分析の手法は」などを念頭に、constructの数、質問の数、Likert-scaleの数などを適切に設定すべき。あまりアレもコレもと欲張らないで、測りたい最低限のdimensionだけをきちんと測ることがα向上につながるってことか。dimensionが多すぎてmultidimensionalityになっていないかどうかを調べるためには、exploratory factor analysisをしてみるのがおすすめ。要因が1つ以上であれば、multidimensionalな疑いあり。しかしながら、因子分析の結果は研究者が判断しなければいけない要素も多いので、要注意。また、self-repot以外の方法ももちいるなど、被験者のbiasを排除する工夫も必要(たとえば、実際に学習した時間を測る、など)。Likert-scaleだけでなく、多肢選択など、他の回答形態を用意するのも良い。また、motivation研究において新しいコンセプトを考えるとき、それが「どの様に既存のコンセプトと異なっているか」を考えることによって、redundancyを避けるべき。「コレは本当に新しいコンセプトなのか?それとも、同じものに違ったラベルをつけているだけなのか?」と自問自答。著者は、motivationという共通のコンセプトの中に、いくつもの顔をもった細分化されたモノがある、と考えていえる。
 ②様々な種類の分析方法を用いる。相関、因子分析、共分散構造分析など。相関は最も基本的な分析で、両者の関係を見ることができる。加えて、redundantを見つけることもできる。一歩進んで重回帰分析は、数学的に最も効果的な予測をするのに使える。ただ、best predictorを見つけるために使用する際には注意が必要。というのは、predictive powerは多くの場合、式の中のほかの変数の作用も受けているので。best predictorを見つけるためには、単にbivariate correlationをcriterion of interestと比較してみるのが良い(結局相関ってこと?)。因子分析は、a large set of variablesの中にどんなunique conceptがあるのかを見分けるのに使われる。構造方程式モデル(共分散構造分析)は、latent variables(factor)とそれを決定するindicator variablesを表す部分と、両者がどのように関係しているかを表す部分の2部構成となっている。その後、fitを出し、モデルの適合度を確かめる。ただ、構造方程式モデルそのものが明確なcausalityに結びつくわけではないので、注意が必要。Bollen1989は、causalityを示すための3つの条件を挙げている。association:両者に相関があること、direction:predictor(原因)が時間的にcriterion(結果)に先立っていること、isolation:他の要素が全くない孤立した環境(そんなのあり得ないが)でも、同じ相関が成り立つこと。
 ③secondary criterion variablesをモデルに含める。たとえば…。integrative motivationがachievementの原因となった、という仮説を裏付けるために、それに関連したほかの変数(behavior in classrooms, perseverance of studying L2, participation of L2 activitiesなど)との関連も調べる。そうやって、関連する変数を調べると、construct validityが確実なものとなる。このような関連する変数は、原因と結果のmediatorとなることも多い。
 ④underlying processを検証するために、laboratory researchをする。例えばガードナーは、integrative motivationの異なったグループに短期に単語を覚えさせ、その結果の差異を見る実験を行っている(結果は、integrative motivationが高い方が早く単語を覚えた)。このような実験では、learning curveを数字化することができ、両者の関係をきれに浮き彫りにさせることができる。しかし、それはintegrative motivation(だけ)とパフォーマンスの因果関係を明白に裏付けることにはならない。両者の因果関係を証明するためには、integrative motivationだけを抜き出して、同様な実験をしなくてはならないが、それは不可能。integrative motivationは、それだけを抽出するのが難しい概念だが、たとえばinstrumental motivationなら割と簡単にできる。ガードナー達は、「○個覚えられたら10ドルあげる」とincentive(!!)をちらつかせ、instrumental motivationを付けた郡と、incentiveが無い郡に分けた同様の実験を行っているが、こちらもincentiveあり群の方が早く単語を覚えた。この実験におけるinstrumental motivationと先ほどのintegrative motivationの実験の結果を比較することによって(両者が同じパターンを示しているので)、integrative motivationはアチーブメントのcauseとなる、と考えることもできるのではないか。このような実験室の実験の批判としては、言語学習の過程のtotalityをきちんと捉えていない、というものがある。確かに、教室内における言語習得はもっと複雑なものだが、それゆえに絡み合う様々な要因をrule outできるとう意味では、このような実験室の実験も意味あるものだろう。
 Final recommendations. 研究者が研究を用意に比較できるように、motivation測定の尺度を統一し、誰もがその尺度を使えるように提示すべき。個人差がでてくるので、unequivocal casual statementは提示できないが、様々な方法で少しでもcausalityや要因の関係を整理すべく努力を続けるべき。
 感想:動機付けの測定や、動機づけ関係のリサーチデザインに関してまとめられていて、非常に参考になった。統計手法は相変わらずよくわからないけれど、修論前にもう一度読んで、参考にしよう。