Dornyei 2003 Chap.3

Chap. 3. Administrating the questionnaire
質問紙調査の実施は、単なる機械的な作業ではない。いかにして効率よく実施するかにも、いくつかのコツがある。
適切なサンプルを選ぶ:サンプル=母集団ど同様のgeneral characteristics/質問紙に関係する特徴を持っている集団。母集団のrepresentative。男女の比率なども、サンプルは母集団を反映するように配慮する。サンプルサイズに関しては、一概に○人、とは言えないが、正規分布を形成できる程度の人数と考えると、少なくとも30人。統計的処理を考えると(有意さをだすには)50人は欲しい。因子分析などの複雑な手法になると、100人は必要。これに途中で抜ける人、処理不可能な回答をする人などを考慮して、やや上乗せした数を確保すべき。これに加えて、回答者の意思(respondent self-selection)の問題も考慮しなくてはいけない(例えば、教員にアンケートをとる場合、「少しでも自分が回答することによってお役に立てれば」と思って答えてくれる教員はやる気がある人だろうし、「めんどくさいからいいや」と言って、答えてくれない人は、やる気がない教員だったりする。結果として、集まったサンプルは「やる気のある教員」ばかりになってしまい、それは「教員」のrepresentativeになっていない、とか)。これを避けるためには、強制的な実施しかないが(授業の前に生徒にやらせるとか)、それが難しい場合もある。うーむ。
実施:質問紙の実施形態としては、郵送・手渡し(個人/集団)が考えられる。郵送に関しては、「ついつい後回し」「結局投函し忘れた」という事態を避けるためにも(郵送の質問紙の回収率は30パーセント…)、いくつかの注意点がある。まずカバーレターは、回答者と実施者のラポールを形成し、効果的に回答してもらうための最初のツールであるので、調査の重要性・そのフィールドへの貢献度などを述べ、さらに回答者に対して何らかの方向性を示す情報などを、「簡潔に」「短く」載せる。回収率が低ければ、「督促状」(p79)をだす。回収率をあげるためのストラテジーとしては、(p79)多忙な時期には実施しない、質問紙の最初と最後の質問を「おもしろい」ものにする、回答が必要とされ価値のあるものだと強調する、良質の紙と封筒を使う、レイアウトも工夫する、small token of appreciationを同封する(図書券とか?)、など。それでも回収率は50パーセント位だと思ったほうがよい。
回答の質&量を上げるために:実施方法は、回答の質&量を左右する。「アンケートなんてめんどくさい」と思いテキトーに回答する人は多いが、本来人間は意見を表明したりするのが好きな生き物である。この人間本来の性質をうまく利用して、できるだけ「一生懸命」質問紙に答えてもらえるよう、実施の段階でも種種の工夫を凝らす必要がある。例えば……事前告知、回答者にとってのauthorityのサポートを得ておく(校長や教科主任などに公的にアプローチし、研究の趣旨などを説明しておく)、など。実施の際には、実施者の服装、態度、言動に十分に気を配る。特に大事なのが、研究に対する熱意と、質問紙のoutcomeを重視していることを示すこと。人間は「意味のあること」なら、質問に答えることを忌避しない性質があるので、「質問紙の重要性」を説得力を持って訴えること。一般に、「なぜこの調査をするか」と細かく述べると、回答者がbiasを持ってしまうと思われているが、それを恐れて研究の趣旨などを隠そうとすると、回答者が疑問を持ったり不信感を抱いたりして、かえって回答がbiasになるので、この際正直に手の内を見せた方がいい(p87 Gillham 2000)。うーむ。それぞれの質問が、回答者に更なる回答を促すように動機付けるcovertな機能を備えているべき。敬語の使い方にも注意。最後に、回答者になんらかのフィードバック(研究結果や分析結果を知らせる)を与えることも忘れずに。