Hyland, Chap. 7

続き… Chap. 7 Responding to student writing
フィードバックについては、「誰が・どの様に・どこ(形式?内容?)にフォーカスして与える」のがよいのか、悩めるところ。教師のフィードバック、教師−生徒のconference、ピアレスポンスの3つの立場からフィードバックの効用を検証する。
<教師のフィードバック>
教師のフィードバックを疑問視する声もあるが(Zamel, 1985)、一方で教師のフィードバックを有用とする研究ももちろんある(F. Hyland, 1998)。学習者は文法に関するフィードバック(以下FB)を好み(Leki,1990)、教師のFBが結果として学習者の作文を向上させたとする研究は多い。しかしながら、学習者は「なぜここをこの様に直さなくてはいけないのか」という「理由」の部分を理解していないこともあり、教師のFBが学習者のfuture writing developmentに寄与しないというケースもある。どの様なFBを欲しがるかは、学習者によっても異なる。教師のFBの形式を挙げると……①commentary(教師が余白に書き込む手書きのコメントの他に、rubricを使用する手もあり。p. 210に例がある←FBを与える手間・時間の省略にはなりそう。使ってみる余地あり)、②minimal marking(独自のシンボルでエラーを指摘する←学習者にとっては、別の意味で負担?)、③Taped commentary(教師が口頭でFBしたものを録音して学習者に渡す。リスニングの機会を与えることにもなるが、果たして学習者はちゃんと聞くのか?)、④Electronic feedback(メールで提出させ、コメント機能を使ってFBをする) など。 
次に、形式に注目するか内容に注目するかの問題だが、形式があってこそ内容が伝わるわけだし、学習者は形式に関するFBをありがたいと思っており、それが将来の学習につながったという研究もあり、やはり形式をきちんと直してあげることは大事!と、著者は言っている。ただ、全てのミスをあれもこれも直すというよりは、「今はライティングプロセスのどこなのか(ドラフトなのか、仕上げなのか)、どの様なFBがこの段階のこの学習者には最も適しているのか」などを考慮する必要はある。初期段階では構成や内容に、後期段階では文法形式にフォーカスするといい。教師が特に注意するべきエラーの例は、p.186にあり。
また、praise or criticismの問題もある。批判しすぎると学習者はやる気をなくすが、褒めすぎても学習にはつながらない。アメとムチを使い分けて!「ここがダメ」と批判するときは、改良のための提案をつけること。mitigation strategies(p.191, Figure 7.2)を使って、直接的過ぎる批判を避けよう。ただし、変に遠まわしに言い過ぎても、結局FBの中身が学習者に伝わらなくてフラストレーションがたまるだけとなってしまうぞ〜。

<教師−生徒のconferencing>
教師が生徒と対面してFBを与える方法。written FBが一方通行なのに対して、こちらは両者が対話するというのが強み。学習者はwritten FBよりもmore focused, usable EBを得るとする研究あり(Zamel, 1985)。ただし、学習者が単なる情報の受け手となっていては効果は半減で、学習者が質問する、意味交渉する、作文をdiscussする、など、学習者側の積極的な関与があったほうがよい。また、conferenceを好むかどうかも学習者によって異なるので、授業の始めにFB preference questionnaireなどをしておくのもよい。conference前には、学習者に準備をさせる(疑問点を洗い出す、エッセイの要点を説明できるようにしておく、など。p. 196に準備シートの例あり)。FBが機能するために、学習者にconference後に、ジャーナルを書かせてもよい(何が話しあわれたかをまとめる、どの様にFBを使ったかを書く、usefulだと思った点を挙げる、など)。

<peer feedback>
学習者は教師に比べ、peer feedbackには懐疑的であり、その効用も実証的にconfirmするには未だ厳しいところ。pro and conはp.199のtable 7.4にあり。チェックシートを与える、ピアレビューをやっているビデオを見せる、良いピアレビューの参考例を見せる、など学習者へのトレーニングが必要。

まとめ:3つのタイプのFBを紹介したが、それぞれ長所・短所があるので、教師はそれらを理解して、使い分けたり、併用したりしてみては。まずは最初に学習者にFBタイプの好みを聞いたり、ジャーナルを読んで反応を探ったりして、どれを使うかのヒントにする。どれを使うにしても、その目的を、あらかじめ学習者にはっきりさせておく(特にピアレビューの様に、学習者が懐疑的なものは!)。