Ferris, 1997. The Influence of Teacher Commentary on Student Revision. TESOL Q, 31, 315-339.
47人の上級ESL学生の作文110点に対して行った教師の1600 marginal/end commentが、どの程度学生のrevisionに反映されたかを調べたところ、あるタイプのコメントが、more helpfulだったことがわかった。
RQ:①どの様な特徴の教師のコメントが、生徒のrevisionに結びつくのか? ②教師のコメントによって行われた生徒のrevisionは、生徒の作文をsubstantive/effectiveに変えたのか?
実験:2学期にわたるESLライティングコースで課された3つテーマのエッセイのfirst draftとrevisionの110ペア(220点)を検証。教師のコメントは、以下の観点で分析された。A.コメントの長さ(語数)、B.コメントタイプ(ask for info / request / give info / make a positive comment / Make a grammar/mechanics comment)、C.ヘッジタイプ(0=no hedge / 1= hedge)、D. Text specific comment (0=generic comment, 1=text specific comment)。生徒のrevisionに関しては、以下の観点で分析された。教師のコメントによって、生徒が書き直した程度(書き直しがなかったか、あるとしてもminimalだったか、またはsubstantiveだったか)という観点。そして、書き直しによって、質が良くなったか、悪くなったか、変化が無いかという観点の二つの観点。これを6段階で評価した。0=全く教師のコメントが反映されない、1=教師のコメントは少しは考慮して書き直したものの、更に悪くなっている、2=1よりも書き直しが多いが、やはり悪くなっている。3=書き直しはややあるが、それが作文に与える影響は中立的(よくもわるくもない)、4=3よりも書き直しの量はあるが、影響はやはり中立的、5=書き直しはややあり、結果として作文が向上している。6=書き直しはかなりあり、作文の質も向上している。
結果:教師がマージンで行ったコメントとしては、ask for infoが最も多かった。このコメントに関しては、学生は比較的ちゃんとそれに応えてsubstantive changeをしていた。が、そうでない学生もいた。マージンで行われたrequest for informationに関してはあまり受け入れられていなかった。やはり、学生が教師の質問を適切に解釈して反映させる、というのは、あまり期待しない方がいいのかも。教師のコメントの仕方として、命令形のものは少なかったが、命令形が使われていた場合、学生は教師のそのコメントをよく反映させていた。文法エラーに関する教師のコメントは、「時制ミスがあった動詞には最初のパラグラフのものだけアンダーラインをひいておいたから、残りは自分でちゃんとみて書き直すように」という“まとめコメント”的なものを最後に書くようにしていて、これに関しては非常によく生徒の書き直しに結びついていた。コメントの長さ・ヘッジに関しては、あまり関係ないようだ。
結論:RQ1に関して。どんなタイプの教師のコメントが生徒の書き直しに結びつくか?→ marginal request for information, request, and summary comment on grammar.の様なコメントが最も効果的だった。short, generalコメントよりは、longer, text-specificコメントの方が書き直しによく結びついていた。しかし、結果は矛盾するようなものでもあった。つまり、教師のコメントは生徒の書き直しに結びつくこともあれば、そうでないこともあった。RQ2に関して。教師のコメントによる生徒の書き直しは、作文の質の向上につながったか?→書き直しがあった場合は、質を向上させるような書き直しが圧倒的に多かった。コメントが長く、text specificであると、よりよい質の向上に結びついたようだ。
implications:①学生に教師のコメントを無視されないためには、工夫が必要。例えば、1)教師はFBのストラテジー(ルール?)を作る、2)それを学生に理解してもらえるように説明する、3)学生がFBをちゃんと反映できるように生徒を助ける→たとえば、対話形式のrevision letterのようなものにすると、学生がreflectionをする機会を与えることにもなり、よりよく反映されるのではないだろうか。②質問形式のコメントは、一部の学生にとっては理解・反応し難いものかも。教師は「学生に考えてほしいから」と、質問形式でコメントすることもあるが、ESLの学生にとっては、これはconfusingである。これらを考慮すると、教師は、「なぜ質問形式のコメントをするか(=学生に、考えてほしいから。この一つの例だけではなく、もっと広い意味で考えてくれ!と思っている)」を説明するといい。同時に、教師は本当にこのquestion strategyに意味があるのか、もしかしたら他のタイプのFBの方が作文の向上につながるのではないか?など、考える必要がある。③formとcontent、両者に関して同時にFBを与えるのは効果的である。この教師のとったストラテジーで最も効果的だったのは、「基本的には学生のideaにコメントしつつも(=content重視)、文法エラーに関しては、そのパターンをみとって、最後にまとめて指摘する」というものである。これは、「意味を重視するFB vs. 形式を重視するFB」というfalse dichotomyから脱却した、効果的でかつ望ましい方法だといえる。④generalなコメントよりはtext specificなコメントの方がrevisionには役に立つ。だが、generalなコメントにだって、その役目はある(たとえば、褒めるとか)。
感想:実験や分析方法は非常に参考になった。implicationもいい。ライティングに関するFBの分析は、非常に難しいと思った。この論文では、revisionがあったかどうか、どの程度のrevisionだったか、という点を見ているが、エラーの数を数える、文法項目を絞って、それが正確に使えているか数える、holisticにエッセイの得点を比較する、など、いろいろな方法が考えられる。リサーチする際には、どの様な方法にするのが、自分が測りたいものを最も効果的に測れるのか、きれいに結果が検証できるのか、など、考慮する点は多い。難しい!