Dornyei 2001 Chap. 5

Chap. 5. Rounding off the learning experience: Encouraging positive self-evaluation
学習者をmotivateするのに忘れてはいけなのが、学習者が過去を振り返る時に、将来更なる努力をpromoteするような振り返り方をする癖をつけさせることだ。学習者が「過去を振り返る」ことは、単に事実を回想するのではなく、そこに何らかの学習者の主観が入り込むことが多い。この章では、教師がいかに学習者を手助けしながら、学習者にpositiveに過去を振り返る(自分のやったことを自分で評価する)ことをさせるか、が述べられている。
まず第一にattribution theoryの観点から考える。attribution theoryとは「失敗(成功)を何のせいにするか」に主点をおいた論理。たとえば、学業不振の原因が「能力不足のため」と学習者が考えているのと、「勉強しなかったため」「勉強の仕方がわからなかったため」と考えているのでは、今後の勉強に取り組む意欲が違ってくる。前者は、学業不振を「自分ではコントロールできないもの」のせいだと思っているために、努力しようとしない。後者は学業不振は「コントロール可能な要素のせい」と思っているので、努力次第では成績が伸びると考えており、努力することが前者よりは期待できる。Graham1994によると、生徒が挙げるattributionのうち最もinfluentialなのは(西洋では)abilityとeffortである。理想的なのは、positive outcomeはabilityのせいで、negative outcomeはeffort(が少なかった)せい、と考えるパターン(Ushioda 1996)。とにかく、失敗してもそれをpositiveに受け取るような考え方をさせるべきである。まずは生徒のeffort attributionをencourageする。その方法としては、provide effort feedback(学業不振の場合は「努力不足なんだよ、能力不足じゃないよ」とeffortが足らなかったから出来なかったんだ、と強調する。それにより、今後は改善の余地がある、と思えるようになる。「でも努力しました!」と言われたら、ストラテジーやスキルの不足を指摘する。「努力はしたけど、勉強の仕方が違ってたんじゃないの?」など)、refuse to accept ability attribution(「おれ、バカだからできねーんだよ」などという生徒のability attributionのコメントはgentleかつfirmlyに否定する。「そんなことない。やってないからできないだけだよ。勉強の仕方がわかってないだけ」とか)、model effort-outcome linkage(自分自身、努力して成し遂げた困難なタスクについて、生徒に語る。別の生徒の成功体験を聞かせても良い)make effort and perseverance a class norm、など。
第二にmotivational feedbackを与える。feedbackはmotivationをあげるのに非常に大事である。特にpositive information feedbackを与えるべき。
第三に、学習者の満足度をあげる。成功した時は、学習者がその「成功」をもっと喜べるようにする。具体的には、生徒の提出物などに成功をほめるパーソナルnoteを書く、成功を祝う時間を作る(スピーチが終わった後には、「拍手―!」など)、public displayをする(作品展・劇の発表会など)→自分の作品や自分の行動が他人から見られることがプラスになることもある、progressをtangibleなものにする。
第四に、褒美と成績について。褒美はmotivationを上げるという意味では効果的ではあるもののあくまでinstrumentalなものだという。褒美の弊害としえては、1.本来備わってる内発的動機づけを失わせる(褒美がなくてもやっていることに対し、褒美を与え始めると今度は褒美無しではやらなくなる)2. 褒美にconcentrateする様になってしまい、taskそのもの(task遂行のプロセスなど)に対する価値を見失ってしまう 3.目に見える褒美を与えられると、生徒達は「最小の努力で最大の褒美」をもらえるように行動することを考えてしまう の3つ。しかし、これとは逆に、始めはinstrumentalな理由で始めた行動が、徐々にinternalなものになっていくことも考えられる。大事なのは、褒美をmotivationalな方法で使うこと。例えば……褒美を使いすぎない、褒美をseriousに使わない(大人にキャンディーをあげる程度のこと)、lasting visual representationな褒美がいい(メダルとか→家にかえって眺めることができる→成功を深く長く体感できる)、生徒がタスクを終了した後で「がんばってくれてありがと」と感謝の気持ちを表すものとしてunexpected giftとして褒美を与える、困難なタスクにのみ褒美を与える、など。また、褒美は必ずしも「モノ」でなくてもいいわけで、「拍手賞賛」や、「何かを選ぶ権利」「teacher attention/good relationship」なども褒美のうち。
 成績に関しては、学校教育(教師・生徒)は成績を重視しすぎるあまりgrade drivenになってしまい、product重視process軽視につながっている、などの問題点を孕んでいる。しかしながら、生徒のmotivationを高めるのに上手く利用することもできる。例えば…明確なsuccess criteriaを提示し、誰でもそのcriteriaを満たせることができる指導をすると、expectation for successが高まり、それがmotivationを刺激する、エッセイの成績などはパーソナルコメントとともに出す、生徒個人の個人内の相対的improvementを評価する、評価のプロセスに生徒を参加させる(ポトフォリオなどの総括的な評価方法を用いる)、教師のつける成績を生徒の自己評価が補完する、生徒の最終成績は双方向の交渉可能なものであるべき、生徒にも教師の「成績」をつけさせる、など。成績は「教師」が「勝手」につけるものではなく、生徒と教師が協力しあって、生徒の努力を多面的に捉えながら、つけるもの、という考え方がよい。

Conclusion: Towards a motivation-sensitive teaching practice
前章までで、35の全てのストラテジーが紹介されたわけだが、実際に授業となると、どのストラテジーを使えばいいのか、考えるのは大変。そこで紹介されてているのが「good enough teacher」という概念。これは、心理学の「good enough mother」から借りてこられた考えだが、そもそもgood enough motherとは、「子供がきちんと育つために、『完璧な』母親でなくてもいい。ある程度の共感的理解、保護、そしてもちろん愛情があれば、子供は健康的に育つ」という考え。つまりあるthreshold(閾値)を超えればそれで十分で、supermomでなくてもOKってこと。同様に、子供にも「完璧」を求めない。この考えでいくと、教師はgood enough motivatorであるべき。35のストラテジー全てを使用しようとせず、自分と学習者に適した厳選された少数のストラテジーを使えば、それだけでgood enough motivatorである閾値を越えるだろう。大事なのは量(ストラテジーの数)ではなく質。
 ステップワイズ法で、どのストラテジーを使うのか考えよう。①リストから「すでに使用している」ストラテジーをチェック ②チェックしたストラテジーに関して詳細を読み、改良する ③リストの中で、使用したことないストラテジーで、使ってみたいものを1,2個選び、少数のクラスから始めてみる。うまくいけば、徐々に使うクラスを増やす。automated enoughになったらチェックする ④慣れたらまた別のストラテジーを試していく。take it easyで。
 最後に、著者から「試したらその反応を教えてね」というメッセージと、Dornyeiのメールアドレスで終わっている。
 やっと一冊読み終わったが、かなり読み応えのある本だった。sound theoretical backgroundに基づいてはいるものの、基本的には実践向けストラテジーなので、修論に使えるとかいうわけではないけれど、4月からの授業の参考にしようと思った点がかなりあった。これを忘れないように、常に手元において、まだ戻ってきたい一冊。Dornyeiは偉大だ〜。