Developing a Motivational Teaching Practice in EFL Teachers in Slovakia: Challenges of Promoting Teacher Change in EFL Context.
in TESL-EJ, Vol.10, No.2 Sep. 20.

生徒の動機付けを高める様な授業を教師にしてもらうために、それ専門の研修を行ったが、結局教師の実際の指導はさほど変わらなかった、という非常〜に興味深い論文。
方法は、スロバキアのEFL環境で英語を教える英語教師7人を対象として20時間の「motivating language environmentを作るための」研修を行う。研修の前後で、生徒(N=167)にそれらの教師の授業の評価をしてもらう。評価の仕方は、質問紙調査(8つの観点から教師を評価してもらう)。で、その差をT検定したが、56measures (8つの観点×7人の教師)のうち、有意差があったのは10だけで、しかもそのうちの9はなんと、悪化していた!それゆえ、この教師教育のコースは、教師のteaching practiceを改善するという目的は果たせていなかったといえる。
もちろん、生徒の授業評価が完全に教師のpracticeを反映しているとは断定できないが、それでもN=167の量的データはrobustであり、少なくとも研修の前後で教師の教え方に有意な違いが生まれたとは言えないと結論づけることができる。また、この量的データは著者による質的データ(生徒へのインタビュー)によってバックアップされていて、インタビューでも3人の例外を除いて「教師の教え方が変化した」と感じている生徒はいなかった。
それゆえ、その後の論は、「なぜ今回の教師教育が失敗に終わったか」というanatomy of failureの考察となる。失敗の理由として、二つの可能性が考えられる。①研修自体の質がinsufficientであった、②研修内容には問題は無かったものの、個人差やexternal factorが教員の学習を邪魔したり、教員が学んだ新しいアプローチを実行に移すのを阻んだりした。
可能性①は、研修に参加した教師が研修内容を非常に肯定的に受け止めているなどの理由で却下できると考えられる。よって、②に焦点を絞って論が続く。②の背景になる要素としては・・・・・・。まずは、教師に本当の意味での「授業を良いものにしたい」という「やる気」が備わっていなかった。スロバキアの現状として、英語専攻の生徒にとって教師と言う職業の選択肢はlast resortであり、教師になる学生はさほど高いmotivationを持って教師になるわけではなく、accidentalに、またはsecond choiceとして教師に「なってしまった」人々が多く、従って授業改善のためのmotivationも低い。要するに、被験者のintrinsic teacher motivationが低かった。次に考えられるのが、reflective teachingなどの手法がcontextual constrainにうまく合っていなかったということ。被験者は以下の理由でreflectionをしたがらなかった(理由:忙しくてそんなことやってらんない!他人に自分の授業を見られるのが恥ずかしい!自分の拙い英語を他の英語教師に聞かせるのが恥ずかしい!reflectする技術が無い、仕方がわからない、など)。3番目の原因としては、現場のサポート体制が無いこと。他の教員との兼ね合いや、短い授業時間、古い教育システムの中では、やりたくてもそんな革新的なことはできない(p.19)、という声が多くの被験者にあった(=contextual factor)。
結論として、もっとcontextに根付いた教師教育をすべき、というJohnson 2006 p.246を引用して結んでいる。
Discussionで引用したい箇所:効果的な教師教育のためにしなければならないこと(p. 7あたり)/教師の授業評価として、生徒の評価方法を導入していること(p.8あたり)/教師教育の失敗の理由②/