Oakes, 1985

Oakes, 1985, Keeping Track – How schools structure inequality.
Trackには「能力別クラス編成」の意味がある。著者は、アメリカで行われている能力別クラス編成が、教育の機会の平等を奪い、学力の低下や社会格差の助長につながったと指摘している。
例えば、能力別の下位クラスは、カリキュラムや学習時間は一見すると上のクラスと同じなので、「平等な教育」を受けているように見えるが、教師の態度や教授法(quality of instruction)、生徒への接し方、授業中に本当の意味で学習にかけている時間が、上のクラスとは違う、という。Classroom climateに関しても、やはりクラスによって差がある。Classroom climateは、学習に非常に大きく関与するものだが、上位クラスの方が、教師−生徒の関係が好ましいもので、生徒は教師が自分達のことを気にかけてくれていると、(下位クラスの生徒よりも)思っている。上位クラスの方が生徒はよりactively engaging。ただし、生徒が教師から与えられる表面上のclassroom activityの機会に差はない。つまり、「表面上やっていること(与えられている活動)は同じ」なんだけれど、構成員が違うことによって、実際にそこで起こっていることが違っている、ということか。生徒の態度attitudeも、クラスによって大きく異なる。上位クラスの生徒は下位クラスの生徒よりも高いeducational aspirationを持っていて、よりpositive academic and general self conceptを持ってる。ただし、学校への満足度はクラスによっては異ならない(つまり、みんな school’s all rightと思っている)。
つまり下位クラスの生徒にとっては、能力別編成は恩恵よりも弊害の方が大きい、という。では上位クラスはどうなのかというと、「必ずしも能力別クラスの方が高い学習効果を得られるとは限らないし、Topの子はどんな環境にいてもよいachievementをだす」と著者は論じるのだけれど、このあたりはデータ的な裏づけがなく不明瞭。ただ、能力別編成を行っていない群を調査すると、能力別編成でないクラスの場合、下位・中位の生徒への恩恵が大きい(上位の生徒の成績は変わらない)、ということなので、やはり上位クラスの生徒にとっては、マイナスではないものの、プラスでもないってことか。また、この調査では能力別編成ではないクラスの生徒の学力レベルは、能力別編成のクラスでいう「中レベル」よりも上であったという。(つまり、能力別編成ではない編成にしても、「中レベル」よりも上の学力レベルになるので、能力別編成ではない方がいい、ってこと。下位の子達があがるってこと。)
結局、能力別編成が教育の機会均等を奪い、特に下位クラスの子達に上位クラスよりは低い質の教育を与えることによって、もともと存在していた社会的格差(下位クラスのほうがminorityが多い)が、是正されない・または悪化する、ということになる。なので、学校はこの様な教育のinequalityを促進するような制度を取り入れるべきではない、と。
一方、教師の立場になってみると、生徒のレベルが一定の方が教えやすいに決まっている。が、しかしそれはtraditionalな一斉教授の教え方だからそうなのであって、ここらでalternative teaching methodを取り入れてみては、と著者は提案する。それが、cooperative learningである。協同学習推進派は、生徒はheterogeneousなグループでactively working with others することによって最もよく学習する、と主張する。cooperative learningでは、生徒を小グループにわけ、教師がグループ目標に関するタスクを課し、結果も「グループ毎に(グループとして)」評価する、というもの。この様な協同学習によって、achievementものび、more positive attitude towards instructional activities, enhanced intergroup and interpersonal relationshipが生まれたそうな(Johnson & Johnson, 1981, Effects of Cooperative, Competitive and Individualistic Goal Structure on Achievement: A meta-analysis. In Psychological Bulletin, 89, 47-62, Shoaron, 1980, Cooperative Learning in Small Groups: Recent Methods and Effects on Achievement, Attitudes, and Ethnic Relations. In Review of Educational Research, 50, 241-71. )
感想:能力別編成が下位クラスにもたらす悪影響は確かに大きいだろう。でも、上位クラスにもたらす恩恵もかなり大きいのでは?これに関しては明瞭な論理やリサーチが行われていなかった。やはり、教える方とすれば、能力別の方が教えやすい。協同学習を取り入れるとしても、協同学習の持つ危険性など、考慮しなくてはいけない課題は多いのではないか。代替わり案が協同学習やってみては?程度なのも、イマイチ。ただ、2005年に第二版がでているので、こっちも読んでみないとね〜。