Ken Hyland, 2003, Second Language Writing.
春からライティングのクラスを二つもつし、去年とったデータを整理するためにも、とりあえずライティングの分野の知識を注入したく・・・・・・。手っ取り早く知識をいれるには、Teaching and Researchingシリーズの本がいいのだけれど、このシリーズのwritingの本よりも、こちらの方が新しく、かつ廉価なので、Amazonで買ってみた。ら、なかなか良いではないか。今日から少しずつ読み、要点だけメモったものをアップしていきます。
Chap 1. Writing and teaching writing
まずは、L2ライティングに関する諸理論の紹介。教える際に、この様な理論はやはり知っておいたほうがよい。以下のカテゴリーはもちろん、オーバーラップしたり、教師が様々なアプローチを折衷的に使ったりはするが、とりあえず独立したカテゴリーとして説明する。
①Focus on language structure: 文法、語彙、テキスト構造などの側面にフォーカスしたライティングの見方。ステップとしては、1. Familiarization(学習者にテキストを通して文法と語彙を教える)、2. Controlled writing(学習者はfix patternをmanupulate)、3. Guided writing(学習者はモデルを真似る)、4. Free writing(学習者は自分達が身につけたパターンを使ってエッセイや手紙などを書く)の4つがある。主に、文法(固定パターン)重視で、いくつもの型があるスロットにどんどん「部分」を埋め込んでいくような作業で、そこには「意味」が問われることがない。この様な方法には限界があり、学習者は断片的で応用のあまりきかないパターンばかりを学ぶことになる。いくら正確にこれらの断片的な文章を書けても、「良い書き手」となるには、それ以上のものが必要となってくる。よって、この様なlanguage structureにフォーカスした指導法というのは、もちろん必要ではあるものの(特に初級者)、これだけでは不十分。
②Focus on text function:言語の形式formを教えることは必要なのだけれど、それと同時に、その形式がどの様な機能functionを持っているかも教える必要あり。機能とは、目的end, purposeを達成するための手段meansである。具体的には、「トッピックセンテンス、サポートセンテンス、接続詞などを用いて、効果的なパラグラフを生徒が作る」ことを目的とする指導法。文章構成に重きをおいており、やはりまだ「意味」よりは「形式」に偏重している。
③Focus on creative expression:↑が「形式」にこだわっているのに対し、このアプローチは「書き手」個人に重きをおき、書き手の創造性、書き手が自分自身を表現すること、などを重視する。教師は書き手を指導するというよりも、書き手が書くスペースを与える程度で、形式的な修正にこだわるよりも、書き手の作品にrespondする。このアプローチの欠点としては、「良いライティング」を評価することが困難であること。生徒の文化背景によっては、自分自身をさらけだすことを生徒がためらうこと、コミュニケーションの目的としてのライティングの機能を軽視している、など。教師自身の創造性も強く要求される。L1ではいいが、L2だとキツイ。
④Focus on writing process:一時期一世を風靡したプロセスライティング(今もか?)。ライティングのプロセス、特に、ライティングの際に、書き手の頭の中で起こっていること(認知的プロセス)に注目し、「プランし、修辞的な問題をdefineし、それに対する解決策を見出す」ことのできる学習者を育てることを目指す。教師の役割は、文法や形式のみにとらわれることなく、学習者がアイディアを生み出し、構造を練り、ドラフトを書き、自分で修正をし・・・・・・ということができるようになるように、手助けすること。ブレインストーミングや話し合いなどの機会を設けるなどのプレライティング活動も含まれる。また、学習者がどの様なプロセスを辿るべきか自分で把握できるように、学習者の内にmetacognitive awarenessをはぐくむことも必要。つまり、学習者が、自分はどの様なストラテジーを使って書くのかということを知っているようにすること。学習者が書いたものに対するresponseも重要になってくるが、教師のフィードバックだけでなく、ピアレスポンスなども。
⑤Focus on content:「何を書くか」「中身」に注目したアプローチ。特に、アカデミックな分野に進学しようとしている移民らのESL学習者には有用。スキーマやトピックの知識などを与えたり、学習者にリサーチさせたり、などの方法も考えられる。トピックに応じたlanguage structureや語彙を与え、練習させ、自分の考えをそれらを用いて表現する、なども可能。
⑥Focus on genre:より広い、大きなレベルでライティングを捉えた考え方。目的を達成するためにcoherentに書くことを目指す。例えば、手紙を書く、リクエストをする、技術的な説明をする・・・・・・これら色々な目的を達成するために「書く」には、それら「ジャンル」に応じた書き方がある、とするアプローチ。テキストにフォーカスするが、文法などの狭い部分に注目するのではなく、より広範囲の意味において形式に注目する。social constraintsなども注意。ちょっと話がとぶと思うけれど、ヴィゴツキーのZPDが紹介されて、これをライティングにも応用すべき、と著者は言う。最初の段階では、教師が積極的に介入する。文法事項や修辞的なテクニックを「教授」する。次の段階では、学習者にもっとautonomyが与えられ、学習者の主体的な行動のoutcomeとして、ライティングがでてくる。
まとめ:①〜⑥のアプローチは、独立しているわけではなく、教師はこれらを複数使い、互いを補完し合わせたりするのがよい。結局、ライティングというのは、計画を立てたり見直したりの技術、言語の形式、中身、読み手に関する知識の両者が必要なsociocognitiveな活動であるから、学習者はライティングのプロセス、目的、目的を達成するのにふさわしい修辞法・形式、書き手が書き読み手がそれを読むコンテクスト、などを考慮にいれる必要あり。「コンテクスト」に関して言うと、読み手の背景知識や、読み手と書かれたものの関係、読み手と書き手の関係なども、大事な要素となってくる。ライティング指導の心得、27pにあり!
授業への示唆:プレライティング活動を行い、テーマやお題についてもっと考えさせる。書く材料(内容)を提供する。それとともに、書く道具(形式)もちょこっと。プロセスに焦点をあて、メタ的な意識をさせる。ドラフト、ピアレスポンスなども取り入れる。