Hyland, Chap.2

続き・・・Chap. 2
L1ライティングとL2ライティングは以下の点で大きく異なる(Silva, 1993. Toward an understanding of the distinct nature of L2 writing: the ESL research and its implications. TESOL Q, 27, 665-77のp.669)。すなわち、 proficiency, intuition about language / learning experience, classroom expectations / sense of audience and writer / preference for ways of organizing text / writing process / understandings of test uses & the social value of different text type のいずれもが、L1ライティングとL2ライティングでは違う。効果的なL2ライティング指導をするためには、L2ライティングとの差異など、留意する点が多い。
まずはindividual differencesについて。学習者は、様々な背景、知識、動機付け、性格、態度、目標を持っており、それらには学習の間で当然、差(違い)がある。指導の際にはこれらを考慮する必要あり。その一方で、教室内の生徒は単なる「個人の束」ではなく、同じようなスキーマ、習慣、L2ライティングに対するattitudeを持ったsocial groupであり、特に、彼らにはprior language and cultural experienceがあることを忘れてはならない。
では、L2ライティングの学習者に共通の特徴は、というと、彼らはL1の書き手より、less effectiveでless cohesive, less fluent, shorterで、誤りはより多い。彼らは、自らのL2の語彙や文法知識の不足を認識しており、L2で自分を表現することにフラストレーションなどを感じている。(例:良いideaを持っているのに、それを適切に表現するlinguistic resourcesに欠いている、と感じている)。また、L1トランスファーの影響も見られる(例:日本語母語話者はclearな論運びをしない)。他にはp.36のTable2.2.参照。文化的差異もあり。学習者はL1の文化を持っており、従って論理的思考、信条、expectation、背景知識などもL2文化のそれとは異なることを忘れてはいけない。が、しかし、全ての人が同じように文化の影響を受けるわけではないので、「この学生は日本人だから・・・という考え方をする」などとステレオタイプ化するべきではない。
次にCultural schemata and writing. L1文化の影響については述べたが、これに関しては、教師のフィードバックの与え方(error correction)や、評価に関しても同様のことが言える。「良いライティングとは何か」という価値観に関しても、文化の差異はある。学習者の文化的背景を考慮し、評価・respondする必要あり。西洋と東洋の志向の違い(←私にはやはりステレオタイプに感じられたけど・・・)など。西洋=individualistic、東洋=人間はお互いにinterdependent的な考え方をする、と・・・。形式的な誤りよりも、この様な根本的なもっと深い部分の誤り(違い)の方が重症なので、要注意!
Expectations about teaching and writing. 文化が違うということは、expectationも違う。つまり、学習者が教師に期待するものと、教師が学習者に期待するものにも、差がある。トピックの選択、指示の与え方などにも細心の注意を払おう。フィードバックに関しては、欧米文化圏の教師は内容に関するフィードバックを与えたがる傾向にあるが、アジアの学生は形式を完璧に直してもらいたがる傾向があり、両者のexpectationに違いがある。ピアレビューに関しても、例えば香港の学生は「相手を攻撃したくないので、『良かった』というコメントだけしかなくって、ピアレビューは特に役にたたない」というコメントをしており、ピア同士で批判しあって更に良いものを作っていく、という文化がないかもしれない。(Carson & Nelson, 1996, Chinese student’s perceptions of ESL peer response group interaction. Journal of Second Language Writing. 5(1), 1-19)
Teaching and learning styles. learning styleに関しても、個人差がある。学習者の好む学習スタイルはそれぞれ違うし、一人の学習者でも様々なスタイルを好むので、教師が学習者の学習スタイルを性格に把握するのは困難だが、おおよそわかっているとタスクの与え方、タスクの種類、インプットの種類など、学習者に最も適した類のものを与えられるので、良い。たとえば、Reid(1987)のperceptual learning style preference questionnaire(p.53)などを実施して、学習者の学習スタイルを知っておくのも良いだろう。
cultural differences in writing text. テキストの構成(organization, rhetoric)も文化によって異なる。教師はそれを知っておく必要があるし、学習者にもその「違い」を知らしめる必要あり。学習者には、「書くこと」の目的を考えた上で、より良い方法を選択するようにアドバイスを。
まとめ。L1とL2のライティングは、共通点もあるが差異も多く、差異の多くは文化的背景の違いから生じている。単純に、学習者をいっしょくたにステレオタイプ化してしまうのは危険ではあるが、文化の影響というのは少なからずあるもので、指導の際にはそれを考慮するべき。