Gorsuch, Greta. 2001.

Japanese EFL teachers’ Perceptions of Communicative, Audiolingual and Yakudoku Activities: The Plan versus the Reality. EDUCATION POLICY ANALYSIS ARCHIVES. Vol. 9. No. 10.

文部科学省主導の「英語によるコミュニケーション能力の育成」を、現場教師がどの様に受けとめているかを調べた研究。実に興味深いテーマ。著者は、現在の日本の英語教育にある不備として「訳読」とinadequate pre/in service teacher trainingを挙げている。一方で、ALTの増員・学習指導要領の転換(コミュニカティブな方向へ)というプラス材料がある。では、現場の教師は、英語を教えるにあたり、コミュニカティブ、オーディオリンガル、訳読式の3つのメソッドに関して、どの様な活動が相応しいと思っているのだろうか。876人の高校英語教師へ質問紙調査を行い、教師の信条を明らかにする。
 RQ1.コミュニカティブ・オーディオリンガル・訳読の3つのアプローチで英語を教えるにあたり、英語教師は、英語I・IIの教科に関しては、どの方法でどんなアクティビティをするのが適切だと思っているのか? それらは、教師歴・学校の種別・ALTへの関与の度合いによって異なるか?
 RQ2.教師が、指導に影響を及ぼす要素としてstrong/weakだと感じているのは何か?それらは、教師歴・学校の種別・ALTへの関与の度合いによって異なるのか?
 質問紙は4つのセクションに別れている。A.コミュニカティブ(以下CM)、オーディオリンガル(AL)、訳読式(YD)と関連深い教室内活動に関する教師のattitudeを調べる。教師は英語I・IIの授業を念頭に、12の活動のappropriatenessを「非常に同意する」から「全く同意しない」の5段階で評価する。 B.教師歴、学校の種別、ALTへの関与度をそれぞれ3つのカテゴリーから答える。C.学歴。D.指導に影響を与える変数17項目に関して「弱い影響」から「強い影響」まで5段階で評価する。17項目はCohen & Spillane’s (1992) Policy and practice: The relations between government and instruction. in Review of Research in Education, 18:3-49から。
 分析。記述統計に関しては、AとDは、「教師歴・学校の種類・ALTへの関与度」の要素が違えば結果が異なるかということも、ANOVAで有意差を検定した。
 まずは、Aの結果。どの教師の回答も多くの項目に関して大体似通っていて、「まあまあ適当である」のような回答に答えが集中した(ので、平均が最高で3.89、最低でも3.08とあまりばらつきのない結果だった)。CLTはまあapproveされているようだった。訳読式のapproval順位は7,8,10位にあった。ただ、はっきりいえることとしては、「教師が自由に英語を使う」形式の活動よりは「教師がコントロールできる」形式(scriptedな質問-回答形式)が、approval度が全て高かった。つまり、教師は、「生徒(の答えや言語使用)をコントロールできる範囲ならばCLTもまあいいか」と思っている。
 Dに関して。指導に影響を与える要因としては、高い順に「生徒の英語を話す能力」「1クラスの生徒の数」「大学受験」「生徒のexpectation」「テキスト」「教師の英語を話す能力」「教師の英語学習の経験」「同僚」「シラバス」「学習指導要領」「親の期待」「教員のための研修」「教員になるための研修」「ALT」「校長」「個人的にとったteacher development course」「Academic organization」の順。こちらの方が、Aよりもばらつきがあり、回答にバラエティーがあった。教員研修に関する影響度が低いのが嘆かわしい。日本には「non-teacher development climate」があると著者は嘆いている。が、しかし教師歴9-16年の教師たちは「privately undertaken teacher education course」から受ける影響大とでたので、ここらへんに期待したい。
 さて、これらの回答を、「教師歴」「学校の種類」「ALTへの関与度」が違えば有意に違うのかを調べたところ、p<0.017で有意差がでた平均値差が6あった。教師歴により差があったものは、Aでは「訳読へのapproval度」(教師歴が長いとapproval度が高い)、「コミュニカティブinformation gap activityへのapproval度」(教師歴が長いとapproval度が低い)、Dでは教師歴の浅い教師のほうがより強く「教師の学習経験」「生徒のexpectation」「同僚」から影響を受ける。教師歴のmiddleの教師は「teacher developmental course」によってより影響を受けることがわかった。また、ALTへの関与度が高い教師は、よりCLTを容認している。
次に、学校の種類に関する差。私立の教員は、訳読をよりapproveし、communicative information gap activityはあまりapproveしない傾向にあった。つまり、公立より私立の教員の方がtraditionalな考え方をしている。これは、私立教員には研修が義務付けられていないので、公立の教員が受けるような研修を受けていないからではないかと著者は考えている。ふむふむ。Dに関する差としては、私立の教員の方が、「校長」の影響が大きく、ALTの影響が小さいと考えていた。
結論として、教師はmildlyにCLTを容認してはいるものの、実際にそれらを教室で使用する際には、障害となるもの(クラスサイズ・研修)がある、といえる。自分のリサーチにすごく近いテーマだったので、面白かった。統計方法の勉強にもなった。