Simon Borg, 2003

Teacher cognition in language learning: A review research on what language teachers think, know, believe, and do.
Language Teaching, 36, 81-109

教師のcognition(信条や知識、考えなど)に関する広範な文献レビュー。特に、cognitionと①自分の受けた教育 ②教師教育 ③教室での実践 の関係を見ていく。最近の教師の信条と実践に関する研究を全て網羅しているので、非常に参考になる。
 まず①の「教師が(生徒として)受けてきた教育と、教師のcognitionとの関係」について。間違えなく、教師の言語学習の歴史は、教師の信条をshapeしている。例えば、自分がフランス語のformal instructionを何年も受けてきたのに一向に話せるようにならなかったのに、半年フランスに留学したら話せるようになったという経験を持つ教師は、文法重視よりもCLTに傾倒するなどの例が紹介されている(Woods 1996)。他にも、teacher’s experiences as a language learners were a significant infulenceとあり(Eisenstein Ebswoth & Schweers 1997)。
 ②の教師教育に関して。これに関しては諸説あり、教師教育がcognitionに与える影響は薄いと主張する人もいるらしい。一方で、「教師教育(研修)」後に、信条(実践も)がかわった、という研究もあり、ここは意見の分かれるところ。
 ③「教室での実践と、teacher cognitionについて」。teacher cognitionは疑いなく、実践に影響を与えると言えるものの、常に教師のstated beliefがpracticeに反映されているとは限らない。例えば、教師の実践は、social, psychological, environmental reality of the school and classroomによってもshapeされる(p94)。これらのrealityには、「生徒の質(Spada & Massey 1992)」「教師の仕事量=仕事が多すぎて理想的な授業準備ができない(Crooks & Arakaki1999)」「大人数教室・生徒の動機付けの低さ・試験のプレッシャー・決められたシラバス・より経験のある教師に従わなければならないプレッシャー・生徒の英語力の無さ・生徒の新しい指導法への抵抗・仕事量の多さ(Richards & Pennington 1998)」などが含まれる。
 そのほかに、「文法指導とteacher cognition」「reading/writingとteacher cognition」に関する研究を紹介している。例えば、Johnson1992の研究によると、「確固たる信念」を持った教師は、信念通りのinstructionをする、ということを示した(リーディングのクラス)。
 teacher beliefに関して広くliterature reviewをしており、teacher beliefの参考になる論文。ただ、気になったのは、「信条と実践の乖離」を見るときはみな、「信条=アンケート」「実践=教室観察」という方法になっている。これ以外の方法で、両者を比較した研究を読みたいのだが、なかなかでてこない。